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年の瀬も押し迫った昨今いかがお過ごしでしょうか。

せっかくなので、僕が2013年に劇場で見たスゴイ映画ベストテンでも並べてみようと思います。
年末年始のDVD/BDレンタルの参考に、ないし年末の再上映に足を運ぶ際にちょっと思い出してくだされば幸いです。
Twitterにpostしたときとはちょっと変わってます。

10『わたしはロランス』
脅威の24歳と昨今話題のグザヴィエ・ドラン監督作品。
女装する中年のおじさんと、彼に添い遂げようとする一人の女の物語です。瞠目すべきは冒頭数分。「着飾った人間の歩く姿」への惜しみない賛美が、周囲から向けられる容赦のない奇異の目線を力強く跳ね除けている。
重いテーマをポップな音楽や色彩感覚で描き出していくスタイルの作品というと、近年では「わたしたちの戦線布告」があります。あれと並べて観ると面白いかもしれません。
マイノリティが自分を認め、美しく在るまでの10年紀を、時に残酷に、そして遠慮なくロマンティックに撮る力量は”天才”の名に値するのではないでしょうか。

9『大統領の料理人』
”国父”ミッテラン大統領の専属女性料理人の物語。実話を元にしているとか。
フランス料理というと、洗練された味と見た目にこだわり抜くあまり、日常の食卓からは遠ざかっているイメージがあります。しかし本作中で次々登場する料理は全て、気取らない、でも食材だけは紛れもなく最高級の、つまり日本でいうと究極の肉じゃが定食のようなものなのです。
物語としてはやや盛り上がりに欠けるか。だが安易に女の痛快逆襲劇にはしなかったことが、作品全体の肩の力が抜けた軽やかな雰囲気に寄与しているようにも。
昨今ではフランスも国粋的なものが受けるらしく、国父ミッテランへの再評価の流れも見られるとか。古き良きフランスへのノスタルジーがどこか寂しくもある。

8『セデック・バレ 第一部 太陽旗』
今年の映画シーンを賑わせた台湾からの刺客でした。
部隊は日本統治時代の台湾。悪の日帝により生活を脅かされた先住民族=セデックが反逆を試み、日本兵の家族・子供らが集まる運動会の現場に乱入して皆殺しにした「霧社事件」をモデルにしています。
プロデューサーにジョン・ウーがいるおかげでアクションが迫力満点で嬉しい。物語としては大体ラスト・ラムライとかインディアンものでした。
ただし、セデックを武士道精神の体現者として台湾版ラスト・ラムライをやるためにやや史実を歪めているきらいもあります。台湾が持つ日本への複雑な感情の現れなのでしょうか。よくわかんねです。

7『少女は自転車にのって』
サウジアラビア初の女性映画監督による鮮烈なデビュー作。
イスラム社会で抑圧される女性たちが、いかにたくましく、したたかに生きているかを鮮やかに撮ってみせた本作は、ウーマン・リブ的な観点にとどまらない魅力に満ちていました。
コメディタッチな編集の見事さは、アラビア語圏の映画でありながらハリウッド的でさえある。ラスト2カットの美しさ、見事さには少しフランソワ・トリュフォーを思い出しました。BGMの使い方も涙がちょちょ切れるほど上手くて、こう、つまり、邦画もちょっと見習うべきでは…。

6『ザ・マスター』
サイエントロジー映画。これもかなり話題をさらった覚えがあります。
端的にいうとトンデモ新興宗教の教祖に付き従っていた男が彼と決別する話なのですが、ともすればただのジョークになるシーンの数々を、鬼気迫る演技でシリアスに、恐ろしささえ感じるほどの画面にしてしまった役者の力が圧倒的でした。
外から見れば明らかにおかしいことが、閉鎖的な集団の中では論理的になってしまう様は、「1984年」さえ想起させます。麻原彰晃みたいな人がシャクティパットやら空中浮遊やらを映画でやってみせてなおジョークになっていない、とたとえるとその凄さは伝わるか。
間違いなく2013年必見の一角。

5『サイド・エフェクト』
これは僕の好みです。精神病を扱ったヒッチコック的サスペンスです。
一つの作中に織り込まれたテーマは、薬の臨床治験問題、精神科の診断手法そのものへの問題提起、詐病、精神病患者を生むリーマン・ショック以降の不安定な経済……などなど、盛りだくさん。
サイド・エフェクトというタイトルには、薬の副作用という一つ目と、社会によって病まされる人という二つ目の意味が込められているのでしょう。
ラストのズームアウトしていくショットで、物語世界と我々の日常を繋げてみせる見事さも一見の価値あり。映画演出の教科書のような映画でした。

4『嘆きのピエタ』
金獅子賞を受賞した韓国映画。
韓流ドラマやスターを使ったサスペンスでは決して見られない韓国の暗部、というテイストの作品です。本当に韓国の低所得者層がこんななのかは知りませんが…。
似たような韓国映画に「息もできない」という作品があるのですが、良くも悪くも地に足がついていたそれとは違い、本作は「母親を名乗る謎の女」や主人公が飼う「うなぎ」など、現実味を敢えて失わせる幾つかの要素が盛り込まれています。それらによって編まれる幻想的な画面で、やっていることは借金の取り立てなのだからすごい。
取り立てシーンの目を背けたくなるような下衆さに人によっては魅了されるのではないでしょうか。
あんま関係ないですが、ものすごく不味そうな食事が出てくると、あ~韓国映画だ~~って感じがします。

3『ビル・カニンガム&ニューヨーク』
ニューヨーク・タイムズにストリートスナップ写真を載せ続ける老人のドキュメンタリー。
ニューヨーカーの進化し続けるファッションをハイエナのようなセンスで撮り続ける彼、ビル・カニンガムに撮られたがらないファッショニスタはNYにはいないのだとか。
彼の、美しく着飾った人々への情熱を追う一方、映画はビル・カニンガムという男の質素さや、自分の服装への無頓着さに着目する。だが、すごい老人だが奇人、では終わらない。
最後の最後のインタビューで、彼の人生における驚くべき欠落が明らかにされる。撮ることに全てを捧げた結果がこれなのか、彼が得たものは欠落に見合うのか。唖然とすると同時に、そこに神聖ささえ兼ね備えたアーティストの真髄を見るのである。
一言でいうと、美しければそれでいい、ゆえに、名作です。
傑出したドキュメンタリーでした。

2『タイピスト!』
フレンチポップスポ根映画。ELLEなどで特集が組まれ、日比谷シャンテ(確か)での上映は連続20回だか満員御礼になる盛況ぶりだったとか。
マイ・フェア・レディのテンプレに従い、田舎の雑貨屋の娘がステキな弁護士に出会い、彼の秘書になりレディになり、当時最も知的なレディの象徴であったタイプライターの早打ち選手権に出場する……という物語です。
これが特訓とか、各国代表とガルパンのように戦うとか、最後はエルガイムMk-Iとか(全部観ればわかる。本当なので観て欲しい。)、女性誌文化圏に留めておくにはあまりにも惜しい熱さを持った快作なのであります。
最後の台詞に、商業的にはハリウッドに勝ち目がないフランス映画なりの誇りがありありと現れているのがまたいい。
余談ですが主演のデボラ・フランソワはダルデンヌ兄弟「ある子供」に主演した人だとか。しかし今度は悲惨な目には遭わずに、幸せな役柄です。

1『愛、アムール』
ミヒャエル・ハネケ監督、二作連続でのカンヌ国際映画祭パルム・ドール獲得作品。
老々介護の美しさも醜さも、全てさらけ出す脚本、主演、助演、照明、美術、何もかもが見事に計算されつくされていて、拍手を贈ることしかできない傑作でした。テーマがテーマだけにアート方面のみではなく、アカデミー賞で外国語映画賞にも輝いているのが本作の恐ろしいところです。真の芸術にして真の娯楽、即ち映画とはこういうもののことを言うのだ!うはは!って感じです。やべえ!やべえ!みたいな鑑賞時の投稿が下の方にあると思います。
ミヒャエル・ハネケ最高~!!!

そんな2013年でした。

番外。。。
『パシフィック・リム』
『風立ちぬ』
『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z』
『ホーリーモーターズ』

極めて個人的に思いれてしまう作品や、あんまり触りたくない作品は番外にしました。パシフィック・リム最高だったよね。風立ちぬ始まって5秒で泣いたよね。森田涼花さんかわいいよね。かわいいね。カラックス意味わかんないね。

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2014年もよろしくお願いします。

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ファントム 開戦前夜 / 監督 : トッド・ロビンソン


ようやく観ることができました。
上映期間が二週間と非常に短く、上映も一日一回というやる気のなさ。
『蒼き鋼のアルペジオ』との謎コラボなど、配給会社の姿勢には疑いを持たずにはいられませんが、とにかく観られたので良しとしましょう。
基本的に潜水艦映画はだいたい好きなので、その上でドゥカヴニー、エド・ハリス、ウィリアム・フィクトナーなどの渋めの役者が固めているとあって、観なくてもおもしろいに決まっています。

お話としては、KGBの過激派(ドゥカヴニー)が旧式の通常機関型潜水艦と秘密兵器《ファントム》を使ってアメリカに先制核攻撃を仕掛けて第三次大戦を始めようと企むところを、艦長エド・ハリスや副長ウィリアム・フィクトナーが阻止する、というなんかよくありそうな話です。登場人物が全員英語を喋っているので、てっきりアメリカの潜水艦にソ連のスパイが潜入して云々みたいな話かと思っていたら、徹頭徹尾ソ連の潜水艦の話で登場人物は全員ロシア人でした。

撮影にはサンディエゴで保存されている本物のソ連潜水艦を使ったとのことで、“潜水艦っぽさ”は抜群です。狭く重苦しく空気の澱んだ閉鎖空間という潜水艦映画の醍醐味を十分に表現した画面作りはなかなかのもの。また人物の見せ方もくどくなく、台詞で多くを提示しない形になっていたのも好印象でした。
佳作の雰囲気ではありますが、長らく見なかった潜水艦映画の久々の新作ですし、外せない一本になっていると思います。

ちなみに観客は私を含めて5人でした。d(^_^o)

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ごぶさたしております。

『三姉妹〜雲南の子』

http://moviola.jp/sanshimai/

 中国ドキュメンタリー映画界の雄、王兵監督の最新作。
 今回彼が題材としたのは、中国の農村でも最貧と言われる雲南省のとある寒村。採れる作物はじゃがいものみで、2007年まで電気も通っておらず、水は井戸のみ。家は土壁であり、またほとんどの家は電化されていない。そのため常に家中薄暗く、陽の光が届かない場所はいつも湿っている。村を出ることができる大人は大概職を求めて都市へ向かうので、村には老人と子供ばかりが残っている。

 そんな村の三姉妹です。

 ごぞんじの通り、中国には一人っ子政策というものがあり、また男子が福をもたらすという俗信もあるため、女子はあまり歓迎されない。労働力としても低質である。子供のうちに親が結婚相手を決め、10代のうちに結婚させなければならないが、相手が(他村の)裕福な家の男であることが必須になる。村での生活はあまりにも貧しく、女子には結婚相手の男から実家への援助をさせる義務のようなものがある。
 映画の主人公となった三姉妹は、一番上が10歳。母親は失踪し父親は街に出稼ぎに行き、残された三姉妹は、親族に煙たがれながら痩せた家畜の世話をして日々生き抜いている。

 そんな彼女たちの日々を手持ちカメラで淡々と追ったのがこの映画です。そして王兵監督作品の凄みは、まるでカメラ越しではないかのような映像を見事に撮ってしまうことにあります。三姉妹も親族も、カメラ目線になることはほとんどありません。まるで視点だけが村の中に溶け込んでいるかのようです。ドキュメンタリーではありますが、ナレーションやBGMは一切なく、それらしいのは最低限のテロップだけです。
 突きつけられる現実は容赦がないし、中国最貧の農村の今を記録した資料としても貴重だし、村に空気のように溶け込みこのような映像を撮るまでの労苦を思えば本当にとてつもないシロモノです。

 しかし最大の問題として致命的に眠く、かつこんな映画を見せられて誰が得するのかわからんので、かかっている映画館があったら積極的に通ってお金を落としてあげてください。
 150分以上あるのでコンディションを整えて行きましょう。僕は寝ました。

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お久しぶりです、Goog;e+ キネマ倶楽部です。


摩天楼を夢みて / 監督:ジェームズ・フォーリー (1992年)


大昔にWOWOWで録画したものを観ました。
アル・パチーノ、往年の名優ジャック・レモン、エド・ハリス、ケヴィン・スペイシーと(今見ると)すごいビッグネームがそろい踏みで驚きました。

舞台はN.Y.のとある不動産会社。
腕利きの若手セールスマン、アル・パチーノ。
かつては凄腕のセールスマンだったが、今ではぱっとしないジャック・レモン。
会社はクソだし世の中は不公平でとにかくクソだから早く辞めたいとぼやくエド・ハリス。
そして彼らに嫌われている中間管理職、支店長のケヴィン・スペイシー。
徹底的な実力主義のこの会社では、成績優秀者には良い顧客情報が与えられ、そうでないものには余り物のしょうもない顧客情報しか与えられず、成績がぱっとしないジャック・レモンやエド・ハリスは「こんな情報で物件が売れるわけがない」とぼやいていた。
ある日、本社から「今月の成績が3位以下の者はクビ」という指示が出て、彼らの間に緊張が走る。

という喜劇っぽい筋書きですが、決して喜劇にはならず常に緊張感のある画面になっています。エド・ハリスは文句ばかり言う協調性のない嫌なやつを、アル・パチーノはやはり口達者な胡散臭いキャラを好演と、舞台劇原作ということもあってかとにかく役者の演技が生える中、今は亡きジャック・レモンの演技が絶品です。クライマックス、どん底に突き落とされたレモンに対し、何も知らないパチーノが今まで敢えては口にしなかったレモンへの尊敬の念を語るシーンは魅せられました。

派手さはまるでない地味な作品ですが、期待以上に楽しめたのでおすすめです。ちなみにDVDは驚愕の定価500円です。BD出してくだされ~

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面白半分でもガッチャマンとキャプテンハーロックを観に行くのはやめましょう。
以上です。

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『マン・オブ・スティール』

http://wwws.warnerbros.co.jp/manofsteel/index.html

試写会で見ました。終わってから、券をくれた人と飲み屋でずっとパシフィック・リムの話してました。パシフィック・リム最高!!!

それはさておき。

ヒーローものではなく救世主ものといったほうが適当ではないか。
そもそもスーパーマンの基本設定からして英雄流離譚に英国風の名前で社会に溶け込むユダヤ系、「カル・エル」という名(エルはヘブライ語で神、仮面ライダーアギトでお馴染み。)などなど、神の子キリストを彷彿とさせる要素が非常に強かった。この設定に忠実に沿うなら、救うべきはアメリカではなく地球人類そのものなのだ。
しかし、スーパーマンおなじみの決め台詞といえば「僕は真実と正義とアメリカン・ウェイのために戦う」である。そして赤と青、言わずとしれた星条旗モチーフのコスチュームを身にまとう。アメコミの需要から生まれたと思われるこの致命的な矛盾を、マン・オブ・スティールは丁寧に解決している。
まず、本作のクラーク・ケントは30すぎまで肉体労働をしつつ延々と自分探しをしている。どこかで見たこの設定、完全にキリストである。そして本作のスーパーマンは、赤いブリーフを履いていない。赤の欠落はそのまま星条旗的な要素の減退にもつながり、彼はアメリカン・ウェイなどという小さなものではなく、地球人類のために命をかけて戦うことになる。それはもうとてつもなく崇高なのだ。童貞なんじゃねえのかってくらい。
モーゼと呼んでくればりの人波通過やあからさまに十字架のポーズを取って落下していくシーンなど、キリストを彷彿とさせるシーンは多い。ヒーロー的な喝采を浴びることはない。一切ない。そして救世主は原罪を背負うのも大事なポイントである。本作では、彼が救世主たるために、ヒーローではありえない重大な罪を犯している。そのシーンと続く超人の咆哮はぜひ劇場で観て欲しい。
おそらく、この映画の公開後の評判はあまり奮わないだろう。というのも、都市という現実的なものではなく、惑星という浮世離れした、ともすればチープな規模で話が展開するためだ。レックス・コープはロゴしか登場しない。敵はクリプトン星の異星人であり、やってることはほとんどインデペンデンス・デイである。しかしそれも、人類の救世主たりうる力と、それに合わせた舞台のスケールが選択された結果といえる。
リアルとは決してスケールの小ささを意味するものではない。スケールが大きくなる方がリアルである場合もある。マン・オブ・スティールは、一般的な想像の域内に収まる、という意味でのリアルではなく、恐るべき力を持つ宇宙人が存在したら?という仮定のもとにシミュレーションした結果としてのリアルなのだ。

これはアリだなと頷ける作品でありんした。

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絵的なおもしろみも満点でした。
しかし全体的に設定への説明が一言足りないようなところはありました。

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『セデック・バレ 第一部 太陽旗』

http://www.u-picc.com/seediqbale/

「海角七号」の監督最新作。
海角七号ってなんぞやというと、台湾ではとても有名で日本でも一時期めっちゃ流行ったしょうもなし系恋愛映 画です。ロケ地が聖地化・観光地化するレベルだそうなので、まあ事実上のらき☆すた冬ソナ素直になれなくてといったところではないでしょうか。一応観た気 はするんですがすごいサブカルだったような覚えしかないです。
台湾は全体的に親日の国(?)と聞きます。海角七号もそれはすごい日本LOVE映画で、日本LOVEすぎて中国本土では当局にBANされたそうです。赤い国こわ……天安門天安門……

そんな監督の最新作。
ざっくりというと、日清戦争後の台湾を舞台にしたインディアンものです。

富 国強兵、殖産興業を謳う大帝国が文明化の名のもと に少数民族の文化や伝統を破壊し、それに対し、かつて部族の英雄、真の男(セデック・バレ)と呼ばれた主人公が20年の雌伏の時を経て立ち上がり、決して 勝ち目がない戦いに赴き、憎き日帝の手先を一匹でも多くぶち殺すというお話です。場所や時代は違えどインディアンものです。
しかし決定的な違いは、カウボーイがいないことです。
つまり日本におけるカウボーイ=心優しい侍がおらず、日本人は基本的にセデック族に同情などせず、交流もせず、徹底的に悪者として描かれます。しまいには「わ、わしとて武士の末裔!貴様らなどにー!イヤーッ!」って叫んで首切られて死にます。すごい。

そ の上、日本人の悪としての描写は、たとえば暴力をふるったり、相手の文化を尊重しないなどという 、個人の卑劣さだけには留まりません。ある意味暴力よりも強烈なのは、セデックの土地に建てられた朱塗りの鳥居なのです。狩場や先祖代々受け継いだ自然、 資源、労働力、女、だけではない。信仰さえも奪おうとする侵略者のとてつもない卑劣さが、霧に煙る街に立つ真っ赤な鳥居に象徴されます。
その悪の 日帝に死を恐れぬ戦士としての主人公らが立ち向かっていくのですが、敵の首を切り落として初めて一人前の男として認められ、自然と同化し、死んだ戦士は先 祖の狩場へ行くのだ、という原始的な価値観と、まるで武士のような命よりも誇りという価値観がどうもつながらないような気がしてならないんですね。そう 思って調べてみると、史実のモーナ・ルダオ(セデック族のある一部族の頭目で、本 作の題材となった「霧社事件」の主導者で、主人公)は反乱を企てては当局に察知されということを繰り返しており、さらに反乱の直接の動機も、息子が日本人 警官を殴ったことの発覚を恐れたという、ひどく俗っぽいものが出てきたりしました。
ここから先は推測なのですが、本作におけるセデック族は、黒澤 明的な武士道で映画向けの脚色を受けているのではないか。そして、制作側の愛した日本的なものは、作中では日本人ではなく、セデック族が担わされているの ではないか。何せ本作におけるセデックは、生きるためではなく、立派に死ぬために戦っているのです。ブシドーですよ、ブシドー。(霧社と書いてむしゃすな わちMusha_360と読むのだから当然では??)

てな感じでモーナ・ルダオ率いるセデックたちが小学校の運動会を襲撃し(Musha_360感あるな?)日本人を皆殺しにするまでが第一部。死体に囲まれ物悲しげに空を見上げるモーナの姿が印象的でした。

第二部では、一部ラストで妻子を殺されたことで阿修羅と化した元対セデック穏健派の男が暗躍し、対立部族に武器を与えて内乱をあおり最終的に皆殺し返しにするまでが描かれるようです。計4時間30分。超大作だ!
しかし、頭目の踊りや文化の違いとコミュニケーションの断絶、もしかしたらわかりあえたかもしれない人たちなど、文芸的な内容を多く取り扱うにも関わらず、一番印象に残るのがアクションってのがまたすごい。それもそのはず、製作にはあのジョン・ウーが名を連ねています。

ジョン・ウー感は特に序盤の、モーナが若いころに顕著でした。煙を割って剣が一振り(一体何回撮り直したんだ…)とか、アクション時のスローモーション多用とか、10人くらいが銃を向け合って互いを制止とか、もう紛うことなきジョン・ウーでした。最高。
しかもわざとらしいスローモーションのみならず、血しぶきだけを映すなどの殺人の間接表現がいやに冴えていて、それでいてシーンによっては徹底的にバイオレ ンス描写を突っ込む、実に爽快なアクションでした。

すごい映画だったので後からいろいろググってみたところ、ビビアン・スーが出演のみならず出資 までしてたり、美術が「スワロウテイル」などで知られる種田陽平であったり、製作予算は台湾映画史上最大であったりとなんかもうとんでもないです。CGの 甘ささえなんとかすればアジア映画もハリウッドと肩を並べるような映像が作れるんだなあと驚かされました。(実はジョン・ウーが製作にいることもエンド ロールで知りました…)

そんなこんなで非常に面白かったです。第二部がすごく楽しみですよ。

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台湾映画を甘く見てはいけない。

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2013年も半分過ぎたので、上半期に劇場で観た中で印象に残った作品を5つくらい紹介してみようと思います。
あくまで僕が上半期(=2013年1月~6月)に観た作品なので、公開日とか厳密にアレするとアレかもしれませんが、適宜アレしてください。
もうひとつ、あくまで印象に残った作品です。いいのもあれば悪いのもあります。

1.アミール・ナデリ『駆ける少年』

http://runner-movie.net/

キアロスタミと並び評される(らしい)イラン映画の巨匠(だそうです)、アミール・ナデリの伝説的作品(そう書いてある)です。
薄汚れた街で、船や飛行機で繋がる外の世界を夢見ながら、ゴミ拾いや水兵相手の商売で日々暮らしている少年・アミルの物語です。彼は生まれが特別なわけでも、外からのマレビトと決定的な出会いをするわけでもない。それでも彼は、同じ境遇にあるたくさんの子供達の中でも圧倒的に輝いて見える。映像の中に切り取られた貧しい少年たちの生きる喜びは、観ているこちらにも、あらゆる瞬間が輝いていた11歳の頃を思い出させる力があります。
オールタイム・ベスト級の、とてつもなくいい作品でした。
全国順次公開中だそうで、現在は札幌でかかっているようです。
現在未ソフト化で予定もないようなのですが、僕が観たのはブルーレイ上映でした。売ってくれ。


2.キャスリン・ビグロー『ゼロ・ダーク・サーティ』

http://zdt.gaga.ne.jp/

ヤバい。(太文字強調文字サイズx-large重点)
ビンラディン追跡劇を追った史実に基づくフィクション、らしいのですがこれがヤバい。
もしかすると、アフガンの最前線にカメラを入れ「フィクションのようなドキュメンタリー」を撮った『アルマジロ』や、アメリカ的なことに自省的な「フィクションのような史実」である『アルゴ』と続けて観たことが失敗だったのかもしれませんが、ヤバい。
史実に基づくフィクションなのに、連発されるフラグの数々が余りにも安っぽく緊張感の欠片もない(編集が致命的に下手なのかもしれない)。拷問シーンの壮絶さはなるほど素晴らしいですが、史実として抑圧的に描くにはおもしろフラグを使いすぎ、フィクションとして開放的に描くには(題材のせいもあってか)地味すぎる。おもしろフラグだらけなのに地味すぎる。
極めつけはエリア51です。実際ビンラディンをとっちめた時の作戦にはスーパーステルスカスタムヘリが使われたらしいですが、それが金曜ロードショーみたいにエリア51の秘密格納庫から登場するもんだからもう乾いた笑いしか出ない。ヤバい。エリア51では実際に軍のなんやらの研究が~~とかそういう問題ではない。エリア51はエリア51であって、登場した瞬間映像をB級にしてしまうのだとなぜわからん。
『ハート・ロッカー』は死亡フラグの塩梅が結構上手かった覚えがあるのでどうしてこうなった♪L( ^ω^ )┘♪♪└( ^ω^ )」♪どうしてこうなったって感じです。『アルマジロ』100回観たほうがマシ。


3.ミヒャエル・ハネケ『愛、アムール』

http://www.ai-movie.jp/

マジこれ神です。安易に神とか言うのやめたけど神です。脚本撮影美術衣装編集キャスティング演技全てにおいて抜け目なく神です。
参照: https://plus.google.com/u/0/114631262521772777341/posts/3gMExAiumiG

現在も地方の一部劇場ではかかってるようです。そのうちBD化もするでしょうし観ないと人生損するので観ましょう。


4.ジャック・オーディアール『君と歩く世界』

http://www.kimito-aruku-sekai.com/sub.html

片足を失くした女を介護するのみならずセックス・ボランティア的に奉仕する男が主人公で彼ももろもろで身の破滅一歩手前まで行ったり結構壮絶なお話、なのですが何だこの邦題は。
チョロい恋愛モノだと誤解しそうなこの邦題が印象に残ってしまった。


5.仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z

http://www.superhero-movie.com/

<font size=x-large>森田涼花。森田涼花。森田涼花!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!</font>


観ようと思って逃している「偽りなき者」「ムーンライズ・キングダム」「セデック・バレ」「コズモポリス」「ザ・マスター」あたりはさっさと観たいです。

下半期はSF大作系の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」「マン・オブ・スティール」「パシフィック・リム」や「エリジウム」、ドンパチしないタイプだと「そして父になる」「風立ちぬ」「楽園からの旅人」「わたしはロランス」「許されざる者」あたりを楽しみにしたいと思います。

もちろん「キャプテン・ハーロック」と「ガッチャマン」も、な!

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『華麗なるギャツビー』

http://www.gatsbymovie.jp/

フィッツジェラルド原作をレオナルド・ディカプリオ主演での映画化。何度目だと思ってぐぐってみたら5回目のようです。

この映画、全編に渡って徹底的な下品さが貫かれています。

主演・レオナルド・ディカプリオの笑顔やキレ顔の下品さに始まり、多用される3DCGの下品さ、PRADA・MIU MIU・Brooks Brothersで着飾った根っこのところで知性に欠ける成金共の乱痴気騒ぎ、ディカプリオの使う「オールド・スポート」の下品さ、画面上にフィッツジェラルドが書いた文章がそのままふわふわ飛び出す下品な演出、もうとにかくてっぺんからケツまで下品下品下品です。

特にCGの下品さは群を抜いています。エンドロールに並ぶ凄まじい数のデジタル何とかアーティストを見るまでもなく、それはもう金と人のつぎ込まれ方が半端じゃないのは冒頭一分でわかります。おかげで劇中の1920年台が、ノスタルジーをかき立てる美しい場所として出力されてはいないのが、一周回っていい感じです。

前述の衣装についても、女優や俳優の魅力を引き出すためではなく、ひたすら派手に、「金を使っているように見せる」ために金を使っているので、もうどうしようもないです。それこそバブル的なキラキラが見たくて劇場に足を運ぶならともかく、キャスト目当てだと痛い目見るかもしれません。少なくともキャリー・マリガンのデイジーはすげー残念でした。レオ様は知らん。

ただ、画面の豪華絢爛さは一見の価値があります。こんなに金がつぎ込まれた映像、そうそう見られるものではない。特にエンドロールで"MISS MULLIGAN'S PARTY GOWN'S BY PRADA"と名指しされているガウンと、同時に身に着けているヘッドピースがやばいです。ググったところによると合計25.04カラットだそうです。これだけで映画一本撮れるんじゃねえのか。
パーティ中にブキャナンの目を盗んでギャツビーとデイジーがこっそりちゅっちゅするシーンで着てます。CGも下手なアメコミ映画よりすごいので、絵面を楽しむという姿勢で観るのは、ありかもしれません。
わざと下品にしているのかもしれないですね。そのへんはよくわかんないです。

キャリー・マリガンの飛躍を追いたい人々は観ましょう。わたしを離さないでより痩せたっぽいっすね。正統派美人になってます。ナタリー・ポートマンやスカーレット・ヨハンソンではデイジーのうちに秘めたピュアさは表現できなかったんじゃあないのかなあって思います。

話自体は、ピンクスーツとか「何してる」「座ってます…めっちゃ座ってます…」とかのおもしろポイントをきっちり再現してたしいいんじゃないでしょうか。
原作を知っているなら気になるに違いない「オールド・スポート」ですが、字幕はガン無視です。それはまあ別にいいんですが、ギャツビーは「何者でもない」ことに突っ込まれると仮面が剥がれてキレるのだ、というニュアンスも字幕だと死んでるのでちょっと残念でした。

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字幕担当、戸田奈津子じゃなかったです。



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