(※この記事はIngress Advent Calendar 2016の20日目の記事です。)
http://www.adventar.org/calendars/1873


さて、非常に唐突だが言語について話をしようか。
そもそも言語って何のことだよって方向けに
Wikipediaにも引用されている広辞苑と大辞泉の語訳を貼っておく。

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人間が音声や文字を用いて思想・感情・意志 等々を伝達するために用いる記号体系。
およびそれを用いる行為。(広辞苑)
音声や文字によって、人の意志・思想・感情などの情報を表現したり伝達する、
あるいは他者のそれを受け入れ、理解するための約束・規則。
および、そうした記号の体系。(大辞泉)
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まあ、難しく考えずに人間が用いる意思伝達の手段の一つだと思ってくれて構わない。
音と文字を駆使し、意味を持つ言葉として伝え、受け取る。
日本人なら日本語を、他の国なら自国語を、
多くの人は特別に意識することなく当たり前に使う。

なんだよ、簡単なものをわざわざ難しく言うタイプの面倒臭い人か
と思ったあなた、ちょっと待ってほしい。話したいのはこの先なんだ。
ここまでは言語というものに対する予備知識でしかない。
全然違うことじゃなくてこういうものについて話しているよという共通認識の為だ。

そこで一つ、わりと知られた話をしよう。
あなたにとって「りんご」とはなんだろうか?
甘くみずみずしい果物だろうか。酸味のさわやかな果実だろうか。
赤くてつやつやかもしれないし、しなびてスカスカかもしれない。
時間をかけて煮詰めてあるかもしれないし、お弁当のウサギかもしれない。
背のあまり高くない、枝に頭をぶつけそうな木かもしれない。
虫食いの特徴的なアイコンを思い浮かべる人もいるだろうし、
独特な歌とともに歌手を思い浮かべる人もいるかもしれない。
それらはすべて「りんご」かもしれないが、
あなたが伝えたい誰かにとっても同じ「りんご」とは限らない。

そんなのあたりまえ、と思うかもしれないが、
あえて例として出された時にはわかることが
日常の中では意外と忘れてしまうこともあるのでぜひ覚えておいてほしい。
言語の意味は文化的社会的背景が大きく影響する上、
思想によっても解釈の幅が変わるのだ。

一つの言葉が誰にとっても全く同じ意味を持つ「完全言語」は理論上のものでしかない。
自分たちが普段使っている言語はかなりゆらぎの大きな「不完全言語」だ。
しかも変化していくから、通じた言葉が通じなくなるなんてこともままある。

どうだね、少しは興味が湧いてきたかね?
不完全かもしれないが、しかしなかなか捨てたものでもないのだよ。
完全言語には想像力など必要ないからね。
詩や小説なんてものも言葉遊びなんてものも
そのゆらぎの大きな懐の深い言語だからこその産物なのだ。

おっと、話がそれたね。どこまで話したかな。
そうそう、同じ言葉を使っていても、相手が同じ意味で使っているとは限らないんだ。
ここまできて初めて、Ingressの話をしよう。


さあ、君にとってIngressとは何だろうか?
単なるスマホのゲームかもしれないし、ゲームというより生活の一部かもしれない。
大規模社会実験かもしれないし、神々の遊びかもしれない。
普段はそれなりにちゃんと社会人やってる人達が子供のように遊ぶ場かもしれないし、
悪意ある人に個人情報を晒されないようにステルスする訓練の場かもしれない。
旅行に色を添えるスパイスみたいなものかもしれないし、
なかなか一歩踏み出せないときに後押ししてくれるツールかもしれない。

受け取り方が近い人もいる。でも全く同じことってあるだろうか。
ほんのり微妙に違っている意味を
コミュニケーションを取ってすり合わせていくものなんじゃないだろうか。

あなたの見ている世界は、見たままとは限らない。

そう、仮に見えているものが写真のようなものだとしよう。
平面の写真を見ても普段の経験則やら想像を駆使して奥行きを感じられるかもしれない。
だが、だまし絵の可能性だってあるかもしれない。
少し角度を変えさえすれば、全く違うものが見えてくるのかもしれない。
思い込みや勘違いで見えているはずのものが見えないことだってあるかもしれない。
脳は意外と自分を騙すことが得意だからね。

そこでちょっと想像してほしい。
以前は単なる移動経路でしかなかったその道が、
見落としそうな小さな、だが地域の人に大切に祀られている祠がある道になったとして、
その道は何か変わったのだろうか。
以前からそこにあった道は何も変わっていないんじゃないだろうか。

他人を変えることは困難だけど、自分が変われば世界は変わる。
そして自分が変わると周りも、というか周りの自分への反応も、変わる。

世界はあなたに厳しいだろうか。それとも限りなく優しいだろうか。

あなたの見ている世界は、見たままとは限らない。





そういえば、伝えたいことを言葉にしたとして、
相手に伝わるのはせいぜい2割ほどという説がある。
基本的には相手の表情や抑揚、熱意があれば伝わる精度は上がっていく。
しかしそれでも意図が完全に伝わることはまずない。

文字のみになるとさらになかなか難しい。
読み返せる分、齟齬が少なくなるかと思いきや、
読み返すことで変な深読みをしたりするからだ。
表情も見えなければ、抑揚だってわからないしね。
だから誤解が生じやすい。だけどここで思い出してほしい。

人の言語は不完全で、ゆらぎの大きな言語であることを。
完全じゃないからこそ、想像し、推測し、配慮して言葉のズレを埋めようとすることを。

伝わらないのは読解力がないからだ
という人は読解力よりも想像力が足りない。
伝わらないのは伝え方に問題があったのだろうか
と工夫できる人に私はなりたい。
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