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永井俊哉ドットコム
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専門の壁を越えた縦横無尽の知的冒険
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箸墓古墳が築造された時期は、卑弥呼が死んだ三世紀中頃なのか、それとも四世紀なのかをめぐる論争。

https://www.nagaitoshiya.com/ja/2010/queen-himiko-tomb-hirabaru/#comment-4631
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EV革命は、現在世界で進行しているモビリティー革命の半面に過ぎず、もう一方の、もっと重要な半面は、人工知能による自動運転技術です。この二つの技術は相性が良いことが指摘されています。

内燃エンジンが駆動する自動車は動きがワイルドで、運転者に直観的な判断力を要します。これに対して、電気自動車は精確な動きをするので、コンピュータによって制御しやすいという面があります。また、電気自動車の場合、どこでどれだけエネルギーをチャージするかが重要な課題になりますが、こうしたロジスティクスの最適化は、コンピュータが得意とする分野であります。今後、人工知能による自動運転技術と電気自動車の技術は、手を携えてモビリティー革命を推し進めていくことになるでしょう。

実は、日本の自動車産業は、この点でも不利な立場にあります。トヨタ自動車がグーグルとの提携を断ったことからもわかる通り、各メーカーは、独自の自動運転技術を開発していますが、日本はネットを通じて利用できる汎用的な人工知能の技術の開発に乗り気でない様子です。

日本の自動車メーカーも、一応コネクティッドカー(ネット通信が可能な自動車)の開発を行っていますが、事実上フランス企業である日産を除けば、5GAAが開発する世界標準のC-V2Xではなくて、DSRCというガラパゴス規格を採用しており、かつての日本の携帯電話業界と同じ間違いを繰り返すことになりそうです。

日本がガラパゴス化による失敗を繰り返す理由として、≪端末軽視、システム重視≫の米国とは対照的に、日本には≪端末重視、システム軽視≫の傾向があることを挙げることができます。もっとも、日本が軽視しているシステムは、端末を超えたネットワークのシステムで、端末の中に独立したシステムを作ることには熱心です。

日本人が、得意の擦り合わせ技術で小さなハードウエアに作り込んだシステムは、盆栽のように完成度の高い小宇宙を成していて、家電にせよ、自動車にせよ、そうした精巧に作られた高性能な小型製品が80年代に世界を席巻しました。日本製品のこうした特徴は、伝統的な日本の村社会の特性によるものかもしれません。

大陸の大平原では、一人の指導者が多数を支配する中央集権的なシステムが発達するのに対して、日本のように山がちな島国では、分断された平野に自律的な村が分散する傾向があります。日本の宗教が、八百万の神々が共存する多神教的状態を今日に至るまで続けているのもこのためでしょう。日本製品は、それぞれが自律的で完成度の高いムラを形成しつつも、ムラを超えたネットワークやシステムの形成に対しては消極的で、その結果、各ムラがガラパゴス化しやすいということです。

90年代にインターネットが登場すると、ネットを通じて水平分業することが世界のトレンドとなり、ムラの内部で垂直統合する日本の方式が時代遅れになりました。水平分業の情報社会では、プラットフォームのデ・ファクト・スタンダードを確立した一社が、ウィナー・テイク・オール(勝者総取り)で、利益を独占します。日本では、80年代に、独自規格のワープロ専用機が乱立しましたが、パソコンOSのデ・ファクト・スタンダードを掌握したマイクロソフトのオフィスによって取って代わられました。これと同じようなことが情報家電で起き、自動車でもこれから起きようとしています。ネットに君臨する唯一神が日本の八百万の神々を放逐しているということです。

ハードウェアが、クラウドにあるシステムの端末に成り下がり、内部に完成度の高いシステムを持たなくてもよくなると、それは、もはや日本の職人的な擦り合わせ技術で作らなくてもよい代物になります。かくして、米国がシステムのデ・ファクト・スタンダードを掌握し、新興国が組み合わせ技術で端末を安価に作るというグローバルな分業が行われるようになり、そのどちらにも関与できなくなった日本のメーカーが没落するようになります。

これが90年代以降いろいろな分野で見られるようになった「日本企業一人負け」の実態です。日本経済の屋台骨を支える自動車産業で同じことが起きると、日本にとって大きな衝撃となるでしょうが、これがきっかけで日本がフォーディズム(日本的経営)と決別するようになるなら、悪いことではないですね。

≪端末軽視、システム重視≫の米国と≪端末重視、システム軽視≫の日本という対立構図で言うなら、アップルやテスラはその中間的な立ち位置にあると言うことができます。もちろん、アップルのiPodは、ソニーのウォークマンとは違って、インターネットを重視したからこそ、携帯音楽プレーヤーの勝者になりえたのだから、日本企業よりも米国型とは言えますが、アップルは、ハードからソフト、サービスに至るまで自社で囲い込みをしようとしたという点では、ソニーと同じ間違いをしたと言うこともできます。

「デ・ファクト・スタンダードの条件は何か」でも書いたことですが、ソニーやアップルは、自社ですべてを囲い込もうとしてデ・ファクト・スタンダードの確立に失敗したという歴史があります。アップルのmacOSやiOSは、今日でも多数派ではありません。これに対して、マイクロソフトのWindows、グーグルのAndroidは、端末の製造を他社に開放したおかげで、多数派を形成することに成功しました。

グーグルは、Androidとそれに基づくサービスでモバイル市場で覇権を確立し、端末の製造はアジアの新興国に任せています。最近は、Pixelという独自ブランドのスマホを解発していますが、製造しているのは、依然としてHTCなどのアジアの新興国です。グーグルからスピンアウトしたアルファベット傘下の自動運転車開発企業、ウェイモも、自ら車体の製造を行わないことはもちろんのこと、自律走行車向けの半導体チップの開発でインテルと提携し、サービスに関してもLyftと提携するなど、水平分業を徹底的に進めています。これらは、すべてデ・ファクト・スタンダードを確立するためと見ることができます。

ウェイモと比べると、自動車というハードの製造から自動運転技術のソフトやサービスに至るまで手掛けているテスラは、アップルに近いということが言えます。しかし、アップルが、パソコンでもモバイルでも、デ・ファクト・スタンダードの確立に失敗したとはいえ、破壊的イノベーションから始めて、利益の出る事業を育てたのに対して、テスラは2004年に設立して以来、通年で利益を挙げた事は一度もありません。2017年7~9月期決算によると、最終(当期)損益は約700億円という、四半期決算で過去最大の赤字額を計上したとのことです。やはり地に足の着いた事業ではないからこうなるのでしょう。この点で、アップルとテスラを同一視するのはどうかと思います。

https://www.nagaitoshiya.com/ja/2015/clayton-christensen-innovators-dilemma/#comment-4595

http://bit.ly/2A8V6be
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マックス・ヴェーバー以来、辺境革命論ということが言われていて、毛沢東も「革命は常に辺境から始まる」という信念のもと「まず農村を押さえ、それから都市を包囲する」という戦略をとって成功しました。クリステンセンのイノベーション論も辺境革命論の一種として理解することができます。すなわち技術革新は、辺境の企業が、辺境の顧客層を対象に、辺境的な商品を売り出すことからスタートし、中心的な顧客に対しても中心的な商品を売り出すことで、辺境的な企業(スタートアップ)が中心的な企業(大企業)へと成長していくということです。

中国のような国で、プラスチック製のシンプルで安価な電気自動車が販売されることは、クリステンセンにとって、典型的な破壊的イノベーションと言えます。電気自動車は、再生可能エネルギーと同様、政府の規制と助成によって成長している面があるので、純粋に市場原理のもとで台頭する破壊的イノベーションとは異なるところがありますが、それでも辺境革命論がある程度当てはまるということができます。日本でも、電気自動車は、電動車いすや電動アシスト自転車といった辺境の分野から普及が始まり、バッテリーの性能の向上にともなって徐々に中央の分野にも進出しています。

中国政府が、2019年に国内販売の台数のうち10%以上を電気自動車など新エネルギー車にすることをメーカーに義務付ける法律を発表したのは、環境対策という大義名分とは別に「カーブでの追い越し」という思惑があるからと言われています。すなわち、後発の中国の自動車メーカーが今から成熟しきった内燃エンジンの自動車市場に参入しても日米独の先進メーカーに追いつくことは難しいが、大きなパラダイム・シフトが起きている時には、リープフロッグによる下克上が可能ということです。

日本人の中には「利幅の薄い低価格車の市場は、中国にくれてやればいい」と言っている人もいますが、既存の大企業が、ニッチな市場で起きているイノベーションを軽視し、放置している間に、イノベーターはニッチに確固たる橋頭堡を築き、そこからメジャーな市場へと攻め込み、既存の大企業を倒すというのが破壊的イノベーションですから、日本にとって油断は禁物です。実際、日本の半導体や家電の企業経営者は、韓国や台湾にライバルが現れた時、同じことを言って油断していましたが、あっという間に主役の座を奪われてしまいました。

一般的に言って、パラダイム・シフトが起こる時、古いパラダイムにおける最後の成功者は、既得権益に固執して変革を拒み、その結果、時代遅れとなって、最大の敗者になります。日米独にとって、内燃エンジンでの優位は手放したくはない既得権益で、政府も雇用の維持のため、古いパラダイムを温存させようとします。特に、日本では、摺り合わせ技術による優位を維持しようと、組み合わせ型の電気自動車を嫌い、ハイブリッド車や燃料電池車といった複雑な構造を持つ自動車に固執してきました。

これに対して、新興国のチャレンジャーには、失うことを恐れる既得権益やしがらみがありません。蛙跳びよろしく、ハイブリッド車や燃料電池車といった中途半端な妥協策を飛び越え、新しいパラダイムに乗り移ることができるのです。中国以外でも、タタ・モーターズやマヒンドラ&マヒンドラなどのインドの企業も電気自動車に取り組んでおり、日米独の自動車業界のエスタブリッシュメントにとって大きな脅威になりえます。

日本では、今でも、燃料電池車が次世代エコカーの本命と目され、政府も普及のためのインフラ整備に税金を投入していますが、ワイヤレス給電の技術が実用化されると、燃料電池車に対する電気自動車の優位が決定的になり、燃料電池車のために行ってきた投資が無駄になることでしょう。燃料電池車にはワイヤレスでエネルギーをチャージすることはできません。燃料電池車が、燃料と発電機を搭載して走るのに対して、電気自動車は、外部の大型発電所で効率よく発電した電気を無線伝送で受け取って走るので、最低限の小さなバッテリーを搭載するだけでよくなります。その結果、車体が軽く、安くなり、しかも、爆発炎上するリスクがないので、燃料電池車よりも有利になるのです。

ワイヤレス給電には、電磁誘導、磁界共鳴、マイクロ波という三つの方式があり、この順に大きなエネルギーを伝送することができる一方、伝送距離は短くなります。電磁誘導方式は既に実用化段階にあり、駐車時の非接触充電に使えます。走行中の自動車に充電するために必要な磁界共鳴/マイクロ波方式のワイヤレス給電は、実用化にまで時間がかかりますが、実用化されれば、補助金や規制なしでも、電気自動車が他の自動車に対して優位に立つことができるようになるでしょう。

現時点では、電気自動車は、補助金や規制(ZEV規制など)がなければ普及しないというのが現状で、こうした政府の介入によって歪められた市場では、富裕層向けにスポーツカー仕様の電気自動車を売ったテスラモーターズが一定の成功を収めるなど、クリステンセンのセオリー通りではないことが起きたりします。では、政府による介入がなかったスマートフォン市場で、アップルのiPhoneが成功を収めたのはなぜなのかということが問題になります。

アップルがiPhoneの販売を開始したのは、2007年ですが、アップルはそれよりも前の2001年に、iPodという携帯型音楽プレイヤーを販売しています。それ以前のMDに録音してから再生する携帯型音楽プレイヤーとは異なり、ネットでダウンロードし、iTunesで管理している曲のライブラリを簡単に同期できるということで、人気を博しました。iPodは、パソコンと比べるなら、デザインがシンプルで、機能が限定され、若者でも買えるほど安価でありましたから、このパソコンの周辺機器は、文字通り、辺境で起きたイノベーションの産物であったと言うことができます。

その後、スティーブ・ジョブズは、iPodに電話の機能を付ける形で、iPhoneを誕生させ、さらにパソコン並みに機能を充実させたiPadを2010年に発売しました。ジョブズが惹き起こしたモバイル革命がiPodという周辺機器から始まっていることを考えるなら、この革命もまた辺境革命論のセオリー通りの現象と評することができます。

もとより、iOS端末が高額、高機能に走りがちであることは事実で、そこに目をつけて、新しく辺境革命を起こしつつあるのが、グーグルのアンドロイド端末です。アンドロイド端末は主として低価格帯の機種が売れており、iOS端末ほど利益を上げていないのが現状ですが、ユーザ数が多いということは、グーグルにとって大きな武器になります。

アップルが有料の商品やサービスを提供しているのに対して、グーグルは無料のサービスを提供し、広告で収入を稼いでいます。その結果、グーグルの方が圧倒的にユーザ数が多くなります。これは、次の時代のITの覇者を決める上で、重要な違いを生むことになりそうです。

次の時代において最も重要な技術は、人工知能であり、その性能は活用できるデータの多寡に左右されます。この点で、多くのユーザから多くのデータを得ているグーグルの方が、少数の熱烈なユーザを囲い込んでいるアップルよりも有利です。実際、アップルのSiriは、Googleの人工知能に後れをとっています(5,000問の一般教養の質問をしたところ、Googleアシスタントの正答率が91パーセントであったのに対し、Siriは62パーセントにとどまった)。

現在進行中の出来事なので、今後の展開に不確定性があるとはいえ、モバイル端末で起きている破壊的イノベーションは、クリステンセンが発見した法則にしたがっていると結論付けることがができると思います。

https://www.nagaitoshiya.com/ja/2015/clayton-christensen-innovators-dilemma/#comment-4592

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古代ローマ帝国は、いわゆる五賢帝時代に最盛期を迎えた後、徐々に衰え、大移動を開始したゲルマン民族に蹂躙され、滅んだ。なぜ古代ローマ帝国は持続不可能になったのか。諸説を検討しながら、私の仮説を提示したい。

https://www.nagaitoshiya.com/ja/2017/west-roman-empire-fall-climate-change/

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朝日新聞の報道によると、竹中平蔵による仲介で小池代表の希望の党と松井代表の維新の会が提携するようになったとのことです。衆院解散前の9月20日に、この三者が東京都内で橋下徹同席のもと会談し、松井代表は、「大阪の民進党をズバッと切った時点で信頼できる。小池さんは腹が固まったと思った」と言って、選挙協力に同意したという報道もあります。

議員数の少ない維新とは連携せずに、多くの候補を持つ民進党を丸ごと呑み込んだ方が、政党助成金や連合の支持も漏れなくついてくるから、選挙戦を戦う上で良さそうに思えますが、そうせずに、政治理念を重視し、リベラル色の強い議員を「排除」し、野合批判を回避したのは立派だと思います。その結果、今回の選挙は、自民・公明×希望・日本維新の会×立憲民主党・共産・社民の三極で争われる方向となりました。保守とリベラルが混在する民進党が分裂し、国家主義、自由主義、社会主義が鼎立する構図で選挙が行われるということで、これは、選ぶ側にとってはわかりやすいという意味で好ましいことだと思います。

リベラルたちは、保守対保守では、小選挙区が想定する政権交代可能な二大政党の意味を成さないというような批判をしていますが、むしろ、日本では、かつての自民党と社会党のような保守対リベラルという対立構図の方が。万年与党と万年野党という形で固定してしまい、政権交代可能な二大政党のシステムを機能不全に陥らせてしまうのだから、別の対立軸で二大政党ができるべきです。政権交代の度ごとに外交や安全保障の方針が変わることは好ましくないので、外交と安全保障は保守の立場を採り、内政では、大きな政府か小さな政府かという対立軸で二大政党ができることが、望ましいと思います。リベラルは支持者が高齢化しており、日本共産党も資金難のようで、今後はフェイドアウトしそうです。

安倍晋三首相は、9月25日の記者会見で、「少子高齢化や緊迫する北朝鮮情勢、国難とも呼ぶべき事態に、強いリーダーシップを発揮する」と述べ、今回の衆議院解散を「国難突破解散」と位置付けました。そして、衆院を解散する「大義」に関して「税に関わる重大な変更については国民に信を問わなければならない」と言っています。つまり、2019年10月に消費税率を10%引き上げ、その増収分を幼稚園・保育園の費用無償化や低所得者の高等教育を無償化する「人づくり革命」に充てることの是非を問いたいということです。

教育無償化は維新の公約でもあり、民進党は、2019年10月に消費税率を10%引き上げることに同意しており、かつ教育への公共投資を増やすことに熱意を持っているのですから、これは本来大きな争点にならないはずでした。むしろ、民進党との違いという点では、外交や安全保障での方針の違いが争点となるはずでした。ところがこの目論見は、希望の党の設立と民進党の解体により外れました。小池代表は、外交タカ派なので、外交や安全保障では違いがなく、他方で消費増税凍結を公約に掲げているので、2019年10月に消費税率を10%引き上げるかどうかが新たな争点として浮上してきそうです。

安倍首相は、高齢者への給付が中心の現制度を改め、現役世代にも振り向ける意向を示し、全世代型社会保障への転換を公約に掲げています。これまで高齢者向けの無駄遣いをしてきたけれども、これからは現役世代向けにも無駄遣いをするという宣言です。無駄遣いそのものを止めようという発想がありません。無駄遣いの対象を拡大し、その財源を消費税に求めるなら、その税率は10%では足りず、今後さらに上昇することでしょう。

安倍首相がやろうとしているように、一方で増税をし、他方で官製産業(役所が認可した教育や保育のサービス)を肥大化させるというのは「大きな政府」の路線であり、これと比べるなら、消費税増税凍結を公約に掲げた希望と維新は、「小さな政府」を目指していると言うことができます。税収減の穴埋めとして、希望は公共事業の削減を、維新は公務員人件費の削減を主張しています。公共事業を増やせば日本経済が成長すると信じている日本人は依然として多いので、「大きな政府」の路線を支持する人もいるでしょうが、私としては、「小さな政府」の路線を支持したいところです。

政策に同意しても、小池百合子の実行力を疑問視する人もいるでしょう。実際、彼女は、元キャスターだけあって、メディア向けのイメージ戦略に長けている一方、実務的な政策立案能力に欠けている面があります。しかし、これは政治家にとって致命的な欠陥とは言えません。彼女の師である小泉純一郎は、政策の実務を竹中平蔵など信頼している部下に丸投げしていましたが、それでも歴史に残る名宰相になりました。結局のところ、優れた政治家に最低限必要なのは、人望と政治の大きな方向性を決める洞察力で、細かい政策に関しては専門家やブレーンに任せればよいということです。

小池都知事の周辺には優秀なブレーンが集まっていますから、うまく活用するなら、問題は起きないはずなのですが、彼女はそうした人たちの議論の積み重ねを無視して、独断で自分の結論を出してしまうという傾向があります。それが素晴らしいものなら、トップダウンで組織を率いることができる優れたリーダーということになるのですが、中央卸売市場移転問題で「豊洲移転・築地再開発」という自称「人工知能」が出した最終判断は、お世辞にも「ワイズスペンディング」と呼べるような解決策ではありませんでした。

小池都知事は『文芸春秋』2017年7月号で、「築地市場の改修案も市場問題PTから出され、百花繚乱の様相を呈しているが、ここはアウフヘーベンすることだ」と言っています。アウフヘーベンというドイツ語は、「拾い上げる」、「捨て去る」、「帳消しにする」という意味があり、ヘーゲルは「拾い上げる」と「捨て去る」という矛盾する意味を持つことに注目して、その矛盾を「帳消しにする」哲学用語として使うようになりました。つまり、哲学用語としてのアウフヘーベン自体がアウフヘーベンの産物ということです。キルケゴールは、ヘーゲルの哲学を「あれもこれも」の哲学だと批判しましたが、「あれもこれも」はアウフヘーベンの本質ではありません。アウフヘーベンとは、矛盾を却下することで、それを高次のレベルで解決することなのです。

私は「中央卸売市場は必要か」で、築地市場も豊洲市場も民間に売却することを提案しましたが、これは両方とも却下することで、生鮮食料品の流通問題を高次のレベルで解決しようというものだから、アウフヘーベンと言うことができます。小池都知事の解決策は、これとは全く逆の妥協的な「あれもこれも」で、「あれかこれか」よりももっと悪い結果をもたらすと予測されます。結局のところ、彼女が政治家として成功できるかどうかはは、有能かつ信頼できるブレーンや側近を集めて、任せることができるかどうかにかかっています。彼女のこれまでの人事を見ていると、従順なイエスマンを集めて独裁政治をやろうとしているようですが、これではうまくいかないでしょう。

https://www.nagaitoshiya.com/ja/2017/tsukiji-wholesale-fish-market/#comment-4568
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日本の国運を左右する外交法則

1. 日本は、覇権国と同盟関係を築き、その先進文明を導入することで、繁栄する
2. 日本は、覇権国との同盟関係を解消したり、覇権国と戦おうとしたりすると、没落する
3. 覇権国に対する対外戦争は、日本国内の内部分裂や内乱を帰結する

https://www.nagaitoshiya.com/ja/2017/japan-hegemony-baekgang-mongol-korea-pacific-war/
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ウェブで公開していた『浦島伝説の謎を解く』を加筆修正し、電子書籍として出版しました。Google Play Books では、8月18日までの期間限定で、無料でダウンロードできます。

これ以外のストアでの販売に関しては、以下のページをご覧ください。
https://www.nagaitoshiya.com/ja/2017/book-urashima/

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築地市場は、豊洲市場に移転するべきでもなければ、改修して存続させるべきでもなく、クラウドに移転するべきである。

https://www.nagaitoshiya.com/ja/2017/tsukiji-wholesale-fish-market/

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カロリー制限をした場合とそうでない場合で、自律神経、ホルモン、生理活性物質による反応がどう変わるか、細胞内でのシグナル伝達がどのように行われるか、その結果、栄養素の代謝がどう変わるのかについてまとめた。

https://www.nagaitoshiya.com/ja/2017/calorie-restriction-signaling-pathways/

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カロリー制限(calorie restriction)とは、摂取する食物のカロリーを削減することである。カロリー制限は、栄養失調をきたさない限り、様々な生物で老化の防止、加齢性疾患の減少、寿命の延長をもたらすことが確認されている。ダイエット目的で行われることもあるが、この言葉は、主として抗老化医学の分野で用いられる。本稿では、カロリー制限はなぜ老化を遅らせ、寿命を延ばすのか、カロリー制限にはメリット以外にデメリットもないのかについて考えてみたい。

https://www.nagaitoshiya.com/ja/2017/calorie-restriction-trade-off/


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